127 ショア クラブ

127 ショア クラブ 1993年 478×680mm リトグラフ額装価格: 650,000(税別)

時計を見ると午前9時を指していた。マイアミのショア・クラブというリゾート・ホテルに居る。マイアミ・ビーチシティから北へ一号線を15分程車で登ると 運河のリゾートタウン、フォートローダディールに到着する。その街の郊外にある、この爽やかな響の名を持つホテルに、マイアミの取材で宿泊していた。ベッ ドから起き上がって外光を部屋に入れる。一瞬の眩しさを感じるが、窓の下に大きく広がる運河の美しさに圧倒される。午前9時だというのに僕の体調はすこぶ る悪い。頭と首が鈍い痛みを訴えている。胃は切り傷にレモン汁を掛けられた様な痛みが連続している。完全なる二日酔いだ。どこで何をどれ程飲んだのか記憶 が消えている。ベッドの脇の丸テーブルの上に昨日撮影した35ミリ・フィルムが20本程転がっている。そのフィルムの横には、飲み残しと思われる大きなグ ラスに氷がまだ入っていて、その冷えたグラスの回りの水分がフィルムに浸水している。大変だ、命より3番目ぐらいに大切なフィルムに……何てことだ。あ あ、飲む時は気持ちが良いが、飲み過ぎた翌朝は最悪だ。いやだいやだ。ほんとなら6時に起きているのに、もう9時を過ぎている。朝食を摂るのも中途半端な ので……(だいいちメシなど食えネエ、気持ちワルくて。)カメラを持って、シャワーも浴びずに外に出た。ホテルの一階のショップでミネラル・ウォーターを 買って、一気に飲んで体をゆさぶって、胃の中をバシャバシャと洗ってやった。歩いた。……20分ほど歩くと、汗がダーダーと溢れて出て来た。運河に沿って 歩いた。美しい光景が目の前に広がった。「いいな、この街は二日酔いによく効くなあ」(と、本人が呟いたとか呟かなかったとか……)ああ、こんな美しい光 景があるから、こんな苦しい思いをしてもこのマイアミに来るんですよ。……なんですよ。