161 果てしなき夏の日々

161 果てしなき夏の日々 1995年 500×354mm シルクスクリーン 額装価格:  350,000(税別)

冬が終わると春が来る。永かった冬の寒さの中で眠り続けてきた身には、なによりの朗報が春の知らせだ。生き返ったように、葉山にも春の芽が出そろう頃、 人々が我が春の街にやって来る。春からというもの、夏の目眩く輝きの日々まで我が街に人がたくさんやって来る。この夏、ぼくの元にひとりの女性が訪れた。 若くて美しいひとだったが、ぼくは初めて会う人で、仕事で来たのだから特別にもてなしたつもりではないが、夕方でもあったので食事をしてもらって帰すこと にした。その日も一日中、強い陽射しの中にいたので、夕方になって気温が下がることが楽しみだった。葉山の和風レストランのバーに涼しい風が吹くように なってから、2人で行った。世間話しをしながら、バーカウンターに並んでいる訪問者の横顔をそっと見た。目眩く、あの夏の日々、若い二人が情熱のすべてを 傾けて恋愛をしていた頃を想い出した。二人はその年の夏になるまでに数年間を互いに愛し合って過越して来た。その夏二人のエネルギーは頂点を極めたかのよ うに燃焼した。二人は決して燃え尽きるつもりはなかったのに情熱の勢いを抑えることが出来なかった。その年の夏が終わる頃に最高の昴りを迎えた二人に、別 れがやって来た。燃え尽きたそのひとは秋になって遠くに旅立ってしまった。それから20年余り経ったこの夏、バーのぼくの隣で酒を飲んでいる、あの人に似 た訪問者が、あの夏の日々を想い出させてくれた。葉山の花火を、毎年このレストランで見る。美しい花火の輝きを見ていると、いつも若き日のもう帰って来る ことのない情熱を想い出す。果てしなき夏の日々に乾杯!