60 OCEAN DRIVE

60 OCEAN DRIVE 1988年 570×800mm リトグラフ 額装価格: 650,000(税別)SOLD OUT

ぼくは、このマイアミビーチ・シティを舞台にした描きおろしの作品集をつくるためにその企画内容を簡単な文章にしたことがある。一度も訪れたことのない町 並のイメージサンプルを5年程前に書いていた。それは……「1940~50年代に建てられたピンクとエメラルドグリーンを配した、まさにトロピカル・デコ のTHE CARLILE HOTEL。大きなガラスがはめ込まれた入口のドアには、ガラスに大きなフラミンゴのレリーフがほどこされていて、すりガラスと透明ガラスのコントラスト が美しくキラキラと輝いていた。そのドアを入ると足元の大理石の床もやはり、大胆なデコ模様である。そのロビーの空間をさきほどのフラミンゴや、美しい女 性が舞っているようだった。少々小さめだが、ぼくの予約した部屋はオーシャン・ドライブに面した海の見える 3階の部屋だった。大きめの窓を開けてテラスに立ってオーシャン・ドライブを見ると、海岸の白い砂地に、1940年代製と思われる古いアメリカの車が乗入 れられていて、その車から4人のキューバ人がこのホテルに乗り込んで来ようとしていた。ぼくの部屋のピンクに塗られた入口のドアの前にはプールがある。エ メラルドグリーンと白のデコ模様のタイルは昔のままだ。水面はマイアミの強い陽射しが肌に刺さるように輝き、プールの片隅にはまたしてもピンクに塗られた フラミンゴの飾りがあった。」……と書かれていた。なんと、5年前にこの絵柄が想像で存在していたのだ。プールがあって、フラミンゴやアメ車がいる。ぼく はすでに5年前にこの絵を頭の中に描いていたのかもしれない。あまりにも、おあつらえ向きのこの絵柄はぼくを待っていた。いや待っていてくれたのだ。マイ アミビーチ・シティをこの5年間に2度訪れた。2回の取材で撮りためたフィルムのなかから、真先に選んで、すぐさま描き始めたのは、紛れもなくこの絵柄 だった。