117 ぼくの島の夏の色

117 ぼくの島の夏の色 1992年 585×1030mm リトグラフ 額装価格: 680,000(税別)

ニューヨークから5時間弱のフライトでバミューダ島へ到着した。午後11時を過ぎていて、イミグレーションは大勢の旅行者でパンク状態にあった。英国統治 領のためか?アメリカからの入国には厳しいチェックを一人ずつ丁寧に行なっているため時間がかかり、我々最後尾は午前0時を超えて翌日になってしまた。深 夜だというのに気温は高く、湿度も相当なものだった。TAXIを20分程で拾うことが出来て予約していたホテルに向かう。30分程曲がりくねったワイン ディング道路を楽しみながら到着後、すぐさまバーの明かりを見付けて、席に着いてようやくホッとした。ウォッカ・トニックとビールを2~3杯あおって部屋 に戻って、またホッとした。翌朝は最高の気分で目覚めることが出来た。テラスと続きになっているプールがキラキラと輝いている。眩しくて嬉しくて、光が溢 れて飛び散って、夏の朝の風は微かに桃色がかっていて、私の頬を撫でて挑発的だ。この気分のまま目の前のエメラルドグリーンのプールに飛び込めば絵になる のだが、それはヤメにした。なにしろ昨夜はアルコールだけがディナーだったので空腹を癒すことが先決だ。花より団子とばかりにコテージの前の朝食屋に飛び 込んだ。スパニッシュ・オムレツ・ベーコン、クロワッサン、コーヒーといつものビールがバミューダの朝の空気と一緒に心も満足させてくれた。さて、午前中 は島をロケハンしようと、レンタカーを手配、……なんと、レンタカーはこの島にはナイのだ。その変わりにモペットがあると言われて、早速借りることにし た。日本で走り回っている50ccの原付チャリンコと同じものだった。ただしメーカーはフランスのプジョーで郵便色の鮮やかな赤だった。この島のヘルメッ ト着用義務を守って、島廻りに出発した。バミューダ・ゲンチャリはすこぶる早く快適だった。島内の道路はいたって簡単で、島の輪郭とそれぞれのビーチを結 ぶ山越えの道によって成り立っている。ちょうど、グァムやサイパンと良く似ている。バミューダ島の入江は大小いくつもあるが、それらの全てが美しい。白い 屋根をもつ建物とエメラルドグリーンの水面、無数の良く手入れされたプレジャー・ボートがヨーロッパ的な高級なリゾート感を醸し出している。車は人に優し く、ホテルは可愛くて美しく、島全体を緑が覆い花が一面に咲き、フルーツの香りが島中に漂い……。ホンモノのバミューダパンツが歩いていて最高の気分にな れる。取材もスムーズに運んでいた。フィルムが何本あっても足りないぐらい、どこもかしこも絵になる景色が続いているのでたまらない。本当に手持ちのフィ ルムが一日でなくなった。フィルムを買いに町に行った。この島の唯一のカメラ・ショップでEIZIN御用達のフィルムを20本所望したところ、プライスを みて驚いた。「ゲーッ!」なんと日本の三倍強もしているのだ。店のオヤジが「ベルビア最高!!」と言って日本製フィルムを褒めてくれたが値段も最高なので 10本にした。一日が、心地良い島の風に任せて自分自身がモペットに乗って浮遊している様だった。目眩めく光溢れる島での自由な暮らし。もう絵を描くのを ヤメて舟を出して漁をして、フルーツを栽培してケーキやパイを作る美しい女性がそばにいて、少しばかりお金が余ったら小さなビストロで美しい人とワインと 料理をささやかに楽しんでいる、そんなワタシになりたい。ああ人生がもう一度あったなら……そんな物語を創ってしまう程、この島の夏の色は溢れんばかりに 輝いていた。