125 二人のデッキ 1993年 473×675mm シルクスクリーン額装価格: 550,000(税別)
一人より二人だったらどんなに素敵な時間になるだろう……と時々思うことがある。僕の年齢でもそう思うのだから、若者は一日の大半をそんな風に素敵な女性 と過ごせたらと考えているのではなかろうか。一人より二人と言えば僕の海外取材の二人っきりで旅をする。残念ながら、素敵な女性と一緒ではない。朝は6時 起床、朝食を摂ってすぐ取材に出掛ける。なぜならば僕の好みのモチーフとなる風景は午前10時30分ぐらい迄の光線でないと美しくないのだ。(午後は 3:00~6:00ぐらい)現地まで到着に時間を掛けない様にするためにメチャメチャに忙しい。とても女性と一緒では取材は成り立たない。言語は2ケ国語 以上堪能、時間を正確にわきまえる力を持ち、時にはシークレット・サービスの様なボディーガードを行ない、危険を素早く察知する事を要求されるのだから、 これは逞しくて知的な男でなくてはならない。それでは夜はというと、夕食と軽いアルコールを摂取した午後8時頃には、もう昼間のエキサイティングなフット ワークの為か眠気が襲ってくる。翌朝は早いので僕は9時に眠ってしまう。それから、もう一人の知的な男は翌日の準備に掛かる為にテーブルに地図を広げて、 カメラの手入れを怠ることなく、11時頃ようやく就寝することになる。一人より二人でも180度の開きがあるのだから、どんなにこんな光景での美しい女性 との二人を夢見たことだろう。この絵のタイトルを「いつか二人で」とすれば良かったな、といま後悔をしている。