112 お気に入りの島での暮らし

112 お気に入りの島での暮らし 1992年 670×478mm リトグラフ 額装価格: 500,000(税別)SOLD OUT

美しい島で美しいひとと暮らすなんて、男も女も、老人だって、ちょとした子供だって夢見ることがあるハズです。ニューヨークから5時間程の大西洋に浮かぶ 小さいけれど、ダイヤモンドの様に美しく輝く島、バミューダ島に取材で行ったのです。私の取材を陰で助けてくれるカメラマンのJ君と二人の旅でした。案の 定、島は美しさに溢れて感動的で、一週間なんて、アッという間に過ぎてしまう程二人共、この島の魅力にまいってしまったのでした。私の様なオジサンでも、 もう一度わが世に春をと思ったくらいですから、若いJ君はそれこそどれ程に苦しかったか、今思い出しても可哀相なくらいだと想い起こします。バミューダで の三日目の夜だったと思いますが、食事の後に軽い酒を飲みながらJ君が呟きました。「バミューダの貝殻を拾って帰りたい…。」と、小声で言うので、よく聞 いてみると…例えば恋人が日本で帰りを待っていたとして、オミヤゲをどうするかなどと考えたとすると、もう通常の物では感動がないだろうから、バミューダ 島にしかない貝殻を拾って持って帰って自分の心を貝殻を通して伝えたいと思うと、いま感じていると話してくれました。J君はしきりに照れながらも真面目に 考えているのだとさらに強調して言いました。私は少々感動をしました。この島に来たら20代の男は皆、J君の様に貝を拾うんだろうなと思ったからです。 で、結局J君は貝を拾うのを忘れてしまったのですがその時の気持ちは今でも変わらないのだそうです。J君と日本に帰ってからも時々、バミューダの貝の話が 酒を飲むと出てしまうのですが、その後一年程して、私のよく通った飲屋で、貝をあげるべき美しい女性と出会ったのでした。J君はそのまた、半年程でその美 しいひとにプロポーズをして、なんと再度バミューダ島に旅立つことになったのでした。今度は私との仕事ではなく、結婚式を挙げるために美しいひとと旅立つ ことになったのです。めでたし、めでたしなのです。