114 理想的なバハマのテラス

114 理想的なバハマのテラス 1992年 479×675mm リトグラフ 額装価格: 400,000(税別)

ナッソーから島内をグルーッと一周してみようということになった。空港で借りたレンタカーは、何とふた昔前の日本製のボロ車だった。泥棒の様なレンタカー 会社の手先だと思うと腹が立ってその車に乗る気がしなかったが仕方がない。空港で借りる時に他車と比べてみたのだが、皆どいつもこいつも値段だけで高級で ボロボロのコソ泥みたいなヤツばかりだったのだからあきらめた。地図をコンビニエンス・ストアで購入してついでに遭難した時のためにジュースやらパンなど の食糧のを仕入れて、腹の立つのを抑えることにした。ダッシュ・ボードのラジオをつけると、音がチャンと鳴ったので、現地音楽を島民の様に少々大きく鳴ら しながら出発した。30分程島を走ってわかったのだが、泥棒レンタカーが、我々にまるで理解を促す様に車体が大きく揺れ始めたのだ。「そーれみろ!」と、 未舗装、泥道、大穴無数、おまけに道幅いっぱいに小さな湖が出来ていて、粋なお方だったら湖に名前をつけていっただろうに、嫌味のひと言もいいたくなる道 路状況なのだ。やがて島民だけの静かな小さな町に入った。すごいなと車の窓を思わず閉めた。アフリカのどこかに迷いこんだのかと錯覚する様な風景に変わっ たからだ。狭くて人通りの少ない目抜き通りの両側はエメラルドグリーンやバーミリオン、生のイエローなどの原色が壊れかかった建物にモザイク状に塗られて いて極度に貧しい作りの住居が目に飛び込んで来る。皆、昼から酒を飲んでいて、フラフラと道路に出て来たり、バクチ場の入り口で大声でわめいている女がい たりで…しかし我々二人を見ても悪さはして来なかった。ニューヨークやロサンジェルスのスサミ・ストリートではこうはいかないのだが。通り過ぎてみてホッ として、何となくこの町を見て良かったと思った。日本にだって、こうゆうスサミ・エリアはまだある。高度成長した都会と、その社会から取りのこされた人々 は世界中に、およそ似た様な暮らしを強いられて大勢がスサミ・ストリートを形成さぜる得なくなっている現実がある。一日中島廻りをしてホテルに帰って、取 材の成果を数えながらテラスで食事をした。気分の良い海からの風が先程のつらさを忘れさせて、また私に夢を見させようとしてくれている。島民がサービスを してくれるテラスで食事をしたせいか、その夜、この絵のようなカラフルな夢を見ることが出来た。